学校の重大ないじめ事案 警察との連携徹底へ

2月7日に文科省が出した通知

去る令和5年2月7日、文部科学省が、重大ないじめ事案について警察との連携を徹底するよう求める通知を出しました。

文部科学省は7日、全国の教育委員会などに対し、重大ないじめや犯罪行為に相当するようないじめは、速やかに警察と連携して対応するよう求める通知を出した。警察に相談・通報すべき悪質ないじめとして19事例を具体的に挙げ、どの罪名に当たる可能性があるかを明示した。

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実際に出されたのは下記のリンク先の書面です。

文部科学省初等中等教育局長「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知)」(4文科初第2121号 令和5年2月7日)

https://www.mext.go.jp/content/20230207-mxt_jidou02-00001302904-001.pdf

その添付資料1には「警察に相談又は通報すべきいじめの事例」が示され、いじめのうち刑罰法規の構成要件に該当するものが挙げられていました。

これまでのいじめ対応を大きくアップデートさせるものであり、フォローしておく必要があると感じました。

これまでのいじめ対応の傾向と問題点

いじめ事案のうち犯罪行為に当たる事案についても、今までは、生徒指導の範囲内と捉え、あくまで学校で対応し、警察に相談・通報することを避ける傾向にあったとの指摘がありました。

こうした傾向は、教育の名の下に、内々で解決したい、外部の介入を避けたいという姿勢に基づくものであり、いじめ対策推進法の方向性とは相容れないでしょう。

もちろん、犯罪行為に当たるのは明らかなのに、学校が、警察への相談のみならず、いじめとしても取り扱わず、週刊誌報道によりようやく動くというのは論外です。

この通知では、下記のようにこれまでの傾向、姿勢を糺(ただ)し、これらの修正を迫っています。

いじめの問題への対応に当たっては、いじめ防止対策推進法等に基づき、各学 校及び学校の設置者において、いじめの未然防止、積極的な認知、組織的な対応 等の取組が進められてきたところです。しかしながら、一部のケースでは、学校 及び学校の設置者が法律に基づいた対応を徹底しておらず、被害を受けた児童 生徒がいじめを苦に自殺する等最悪のケースを招いた事案も発生しています。
いじめは、児童生徒の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成 長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであり、学校及び学校の設置者は、いじめ を決して許さず、被害児童生徒を徹底して守り通すという断固たる決意で、全力を尽くすことが必要です。

また、犯罪行為(触法行為を含む。)として取り扱われるべきいじめなど学校だけでは対応しきれない場合もあります。これまで、ややもすれば、こうした事案も生徒指導の範囲内と捉えて学校で対応し、警察に相談・通報することをため らっているとの指摘もされてきました。しかし、児童生徒の命や安全を守ること を最優先に、こうした考え方を改め、犯罪行為として取り扱われるべきいじめなどは、直ちに警察に相談・通報を行い、適切な援助を求めなければなりません。 また、保護者等に対して、あらかじめ周知しておくことも必要です。

通知では、今後、学校は、いじめ対応について次のようなことをすべきと示しています。

重大ないじめ事案やいじめが犯罪行為として取り扱われるべきと認められる事案については、いじめ防止対策推進法23条6項に基づき、直ちに警察に相談・通報を行い、適切に、 援助を求めなければならないこと。

学校のみで対応するか判断に迷う場合であっても警察に相談・通報すること。

なかでも児童ポルノ関連のいじめ事案に関しては直ちに警察に相談・通報を行い、連携して対応すること。

通知では、こうしたことを念押ししています。

学校の内外で発生した児童生徒の生命、心身若しくは財産に重大 な被害が生じている、又はその疑いのあるいじめ事案(以下、「重大ないじめ事案」という。)や被害児童生徒又は保護者の加害側に対する処罰感情が強いなどいじめが犯罪行為として取り扱われるべきと認められる事案等に対して、警察においては、教育上の配慮等の観点から、一義的には教育現 場における対応を尊重しつつも、いじめを受けた児童生徒や保護者の意向、 学校における対応状況等を踏まえながら、必要な対応をとることとしている ことも踏まえ、学校は、いじめが児童生徒の生命や心身に重大な危険を生じ されるおそれがあることを十分に認識し、いじめ防止対策推進法(以下、「法」 という。)第 23 条第6項に基づき、直ちに警察に相談・通報を行い、適切に、 援助を求めなければならないこと。
なお、学校のみで対応するか判断に迷う場合であっても、被害児童生徒や 保護者の安心感につながる場合もあることから、警察(学校・警察連絡員等) に相談・通報すること。その際、警察に相談・通報を行った事案については、 学校の設置者にも共有すること。
近年、児童ポルノ関連を含めインターネット上のいじめが増加しており、 なかでも、匿名性が高く、拡散しやすい等の性質を有している児童ポルノ関連のいじめ事案に関しては、一刻を争う事態も生じることから、被害の拡大 を防ぐため、学校は、直ちに警察に相談・通報を行い、連携して対応すること。

これまでのいじめ対応を大きくアップデートさせるものとなりますから、しっかりフォローしていきたいものです。

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