民事裁判の手続 裁判所に出向くことは少なく 事務所からMicrosoft Teamsを使って進める

民事裁判の手続で裁判所に出向くことは少なくなりました

弁護士の仕事というと、裁判の代理人をイメージするかもしれません。

ドラマで、裁判官や傍聴人の前で、弁護士が弁舌を振るう姿をイメージするかもしれません。

でも実際は、ほとんどの場合、公開の法廷で当事者本人の話を聞く尋問手続でない限り、裁判所に出向くことなく、事務所からMicrosoft Teamsを使って、裁判官と原告側・被告側それぞれの代理人弁護士の三者でオンラインで争点を整理したり、和解の可能性を探ったりしていきます。

よく取り扱う民事事件の類型

私が取り扱う民事事件については、特に次の4つの類型が多いように思います。

1つ目は、不倫の慰謝料請求や、貞操権侵害・婚約破棄を理由とする慰謝料請求など、男女問題に関するもの。請求する側、請求される側どちらも扱っています。

2つ目は、賃貸経営者からご依頼いただくもので、賃料を滞納している借主に対し、強制執行を視野に、賃貸借契約の解除と建物の明渡しを求めるもの。

3つ目は、企業や個人事業主からご依頼いただくもので、強制執行を視野に、取引先に対し、請負代金や売買代金の支払いを求めるもの。

4つ目は、企業からご依頼いただくもので、労務関係の訴訟。(元)従業員から起こされた残業代請求や慰謝料請求への対応、従業員の不当な引抜きや競業を理由とする損害賠償請求への対応もあります。

民事裁判とコロナの影響

新型コロナウイルス感染症が流行してから早3年が経とうとしています。

コロナが流行る前は、一日の業務の中で、裁判所に出向くことがかなりの割合を占めていました。

ところが、コロナ禍になってから、その傾向が大きく変わりました。

新型コロナウイルス感染症が流行する前は……

コロナが流行る前は、大阪や東京、札幌など、よほど遠くの裁判所でない限り、電話会議システムの利用は認められにくい状況でした。

そして、弁論準備手続を電話会議システムで行う場合、当事者の一方が裁判所に出頭しなければなりませんでした。

法律上、当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点及び証拠の整理をする書面による準備手続というものがありましたが、ほとんど使われていませんでした。

このため、遠隔地の裁判所で手続きが行われる場合を除いて、裁判所に出向かざるをえなかったのです。

写真は、岐阜県可児市美濃加茂市可児郡加茂郡の民事事件を管轄する、岐阜地方裁判所御嵩支部です。御嵩町にあります。

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新型コロナウイルス感染症流行後は……

ところが、コロナ禍になってから、その傾向は大きく変わり、「当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるとき」の相当と認めるときを広く解釈して、遠隔地でなくとも、電話会議システムを利用した弁論準備手続や、さらには、今まで使われてこなかった書面による準備手続が行われるようになりました。

そして、現在、書面による準備手続の一環として、電話会議システムの代わりにMicrosoftのTeamsを使った手続が行われています。

特に昨年の夏からは、岐阜地裁多治見支部など地裁の支部でもTeamsを使った手続を行うようになっています。

双方に代理人がついている場合は、第1回口頭弁論期日を開かず、最初からTeamsを使った手続を行うようになってきました。

このため、名古屋、岐阜はもちろん、多治見の裁判所にも出廷する機会が減っています。

さらに令和5年3月1日から改正民事訴訟法が施行することで

そして、今年、令和5年の3月1日からは、民事訴訟法170条3項のただし書きが削除され、当事者のどちらも出頭することなく弁論準備手続ができるようになりますし、民事訴訟法89条2項が新設され、MicrosoftのTeamsを使った手続でも和解ができるようになります。

www.moj.go.jp

 

現行法では、和解をする場合には、原告側か被告側のどちらかが裁判所に出頭しなければなりませんでした。そこで、どちらも出頭しない場合は、調停に付して調停に代わる決定をする(民事調停法17条)、裁定和解(民事訴訟法265条)という方法が使われていました。

改正民事訴訟法の施行により、今後は、民事訴訟の関係で裁判所に出向く機会がさらに減りそうです。

現行民事訴訟

(和解の試み)
第八十九条 裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる。

(弁論準備手続における訴訟行為等)
第百七十条
3 裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。ただし、当事者の一方がその期日に出頭した場合に限る

改正後民事訴訟法(令和5年3月1日施行)

(和解の試み等)

第八十九条 裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる。
2 裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、和解の期日における手続を行うことができる

(弁論準備手続における訴訟行為等)
第百七十条
3 裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。